【プロフィール】
1963 年新潟県生まれ。エジンバラ大学教育学部博士課程修了。「人と自然と異文化」をテーマに様々な環境教育活動を企画、
実施する(特活) ECOPLUS 代表理事。
ミクロネシアや新潟県南魚沼をフィールドに、自然環境を通じたプログラムを展開。
現在は早稲田大学客員准教授、立教大学特任教授。
2010 年7 月に公開された龍村仁監督による「地球交響曲第7 番」に出演。
著作に、『地球( ガイア) の笑顔に魅せられて』『場の教育』(共著) など多数。
Q1 地球温暖化や環境破壊など、地球の「持続不可能性」が問題視されるようになりましたが、地球が「持続可能」であるために、環境教育はどのような役割がありますか?
持続可能な社会をつくるために環境教育は欠かせませんし、鍵だと思います。環境教育は理想論と言われてしまいがちだけど、理想の社会を描き、そのために行動できる人を創っていく可能性を秘めているとも言えます。
環境教育は「どう生きるか」を模索するために必要なのではないか、とも思っています。社会は様々な分野で成り立っています。どの分野でも、それをつくるのは「ひと」であり、何を選択するのかという判断も「ひと」に委ねられています。もし、価値観自体が変容しないのであれば、外からの動機づけ(エコバックなど)がなくなったときに、主体的に動くことができなくなってしまいます。「誰かが言うから」やっている行為は、人が言わなくなったら無に戻ってしまうのです。
「何を選び、どう生きるのか」という価値の変容に関わる根源的な問いをもたらすことが、環境教育の大きな役割だと思います。
Q2 高野さんは新潟県で環境教育プログラムを展開されていますが、なぜ「農山村」で活動を行っているのですか?
農山村には持続可能な社会を考えるうえで必要なものが、すべてそろっているからです。健全な生態系、健全な土壌、森林、湧水、そしてひと。「いのち」を育むために必要なものがすべてそろっていて、この土地で獲れるモノでお金を生み出すこ
ともできます。
そして、助け合いがなくては暮らしが成り立たないため、コミュニティがしっかりと機能しています。様々な動植物、いのちに支えられて生きているという実感は、持続可能な社会を築くうえで欠くことができない要素だと思っています。
複雑なこの世の中を、線で引いたシステムだけで割り切ることできません。いろいろなことが起こったときに「たすけあい」が暮らしの中に組み込まれていることはとても大切なことなのです。
物理的な生命の持続可能性だけではなく、「ひと」や「社会」のありかたも農山村でみつけることができます。そこには祭りという「楽しみ」があり、「死」を身近に感じられる空間でもあります。昔からの叡知を記憶したい、という思いも込められ
ています。
Q3 環境教育プログラムを実施する際に、大切にしていることはありますか?
「気持ちよかった」と思ってもらえる活動を提供することを、いつも念頭においています。体験の中では「痛い」や「暑い」や「疲れる」など、ネガティブな感情も必ずおこります。それらをつらい体験で終わらせるのではなく、どう学びにつなげていけるかが大切だと思っています。
枠に参加者をはめすぎないこのやり方では、参加者同士が衝突することもあります。この「仕組みすぎない」活動はリスクもあるけど、参加者として偶然ここに集まったからこそうまれる学びもあるのです。そのような偶然の中から、参加者一人ひとりが必ず「何か」を持って帰っているという実感があります。「いつか」おこる変化のきっかけ作りに関わっているのだと思います。
Q4 農山村でのプログラムは、コメ作りなど「からだ」を使うことが基本となっているように思います。それはなぜですか?
「ひと」がどうやって生きているのかを、からだをつかって感じることが、持続可能な社会をつくる上で大切な要素だと思っているからです。自分がどこから来たのかを「からだ」をつかって知ることは、自己確立のために欠かせないことだと思います。
Q5 農山村がもつ「自然」は、環境教育の基盤のように思うのですが、高野さんにとって「自然」とは何ですか?
自然は、「いのち」そのものであり、いのちを支えてくれているものです。木や水といった物理的な意味だけでなく、文化や精神も包括する相対的なものです。ひとも自然であることも、忘れてはいけません。
Q6 持続可能な社会をつくるために大切なものとは何でしょうか?
「多様なものを受け入れる姿勢」と「ささえあい」ではないでしょうか。持続可能な社会、「つづく」社会は多様であるべきなのだと思います。私たちは多様でなければ生きていけません。多様さを受け入れることは難しいように思えますが、いろんな道をいったりきたりしながら、相対的に正しい方向を知っていければいいのではないでしょうか。
自分だけがよければいいという立場ではなく、「足るを知る」精神を知ることも鍵です。無理するではなく、足りていて満足という感覚を持てること。持続可能な社会をつくるためには、「おかげさま」と言えるこころのあり方が、大切だと思いま
す。
