長谷川 岳さん(元YOSAKOIソーラン祭り専務理事)

0(ゼロ)であることのありがたみ

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【プロフィール】

1971年 愛知県春日井市生まれ。 愛知県立千種高等学校卒業。
1991年12月 学生仲間5名でYOSAKOIソーラン祭り実行委員会発足。
1992年6月 「街は舞台だ!日本は変わる」を合言葉に、学生実行委員150名で第1回を開催。以降、毎年6月の祭り開催に携わる。現在では観客216万人を動員する北海道の観光資源となる。
1998年3月 YOSAKOIソーラン祭り組織委員会専務理事に就任。
2001年5月 祭りをサポートする「株式会社yosanet」を設立し、取締役を兼務。

【活動に対する受賞暦】(個人・組織を含む)
◆「第9回日本イベント大賞新テーマ賞」(平成5年)
◆「北海道赤レンガフロンティア大賞」(平成6年)
◆「第20回サントリー地域文化賞」(平成10年)
◆「日本生活文化大賞 生活文化賞」(平成11年)
◆「社会起業家賞」(平成14年)
◆「地域伝統芸能大賞 地域振興賞」(平成18年) など

【著書】
「YOSAKOIソーラン祭り~街づくりNPOの経営学」(岩波アクティブ新書)を共著で出版。

■自然が人間の生活のリズムを作る

私が、北海道で学生主体のYOSAKOIソーラン祭りをしようと考えたのは、北海道の土地柄が大いに関係しています。

北海道はものすごく人間が自然に左右されやすいところなんです。自然環境を無視したら死んでしまうような土地柄です。ですから、人間が生活のリズムを作るというよりは、自然が人間のリズムを作るようなところなんです。
私は愛知出身なのですが、大学1年生の冬の時は、北海道のあまりの自然の厳しさにノイローゼにもなりかけました。そんな時、もっと人間からアクションを起こして、自然だけでなく、人間も生活のリズムが作れるのではないか。そして、私は学生だったので私自身が一番影響を与えられる同世代の大学生とともに何かやろうと思いました。こうした時に、高知のよさこい祭りに出会い、南国土佐の圧倒的なエネルギーを目の当たりにして、これをぜひ北海道でもやろうと考えました。それでYOSAKOIソーランが出来上がりました。

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YOSAKOIソーラン祭りの様子

■大学生は存在自体がエネルギーになる

もう一つ北海道でYOSAKOIソーラン祭りをやった理由が、北海道というのは大学生を大事にする街だからです。北海道には大学や短大が16あり、学生街もあるので、大学生が社会の一員として求められる風土があったのです。

街にとって大学生の存在は大事です。大学生というのは、存在自体がエネルギーになるのです。そして大学生は違う感覚を呼び込むんですよね。それが大学生の街の与える影響だと思います。

具体的な話をしますと、第一回のYOSAKOIソーラン祭りは「大学生になにができるんだ?」という反応でした。それに対して私たちは自分を理解してもらうため、全国一若い高知県の橋本知事と全国で二番目に若い北海道の横路知事の対談を企画しました。そこで若者の感覚を社会に意味のあることに昇華していくことをしました。

もう一つは、高知からよさこい祭りの花形の踊り子であるセントラルグループをYOSAKOIソーラン祭りに招き、文化を運んできました。全く期待はされていませんでしたが、若者の感覚で期待以上のことができたところが第一回のすごいところだったと思います。

この感覚は、今も受け継がれており、今年はアースデイの企画やディズニーとのコラボレーション、海外チームを招いたりなど、その時その時のテーマを若者感覚でYOSAKOIソーラン祭りに結び付けています。

■少し辛いことをして仲間を作る

はじめはキャンプ友だちと共に実行委員をやっていました。友だちから同じ目標を持つ仲間になるうえで大事なことは、少しきついことをすることです。つらいことをともに経験すると、瞬時にして仲間になります。こういったことを繰り返していけば、はじめは辛いことでもやがて辛いと感じなくなり、成果が出せるチームになっていくのです。

また私はリーダーという立場でお祭り実行委員を率いていましたが、求められるリーダーは時代と共に変わっていきます。自分達が始めた1992年当時は一点に秀でたカリスマ性があるリーダーが求められました。だから私は協賛を担当し、そこを突出させることでリーダーになりました。
しかし5年くらいやっていくと、だんだん同世代に支持されなくなりました。そこでやり方を変え、意思決定をみんなで決めていくというプロセス重視のリーダー像を目指しました。
決定プロセスを大事にすると、メンバーはその結果にも満足することがわかりました。今はネットやブログの発達による情報過多なので、みんな何を信じていいかわからない状態です。だから今のリーダーは、自分と相手が一対一で向き合う場面では自分の思っていることを伝え、相手を説得できるのが大事だと思います。

■まだ途半ば

YOSAKOIソーラン祭りをやって札幌は変わったと思います。補助金に頼りがちな地方自治体が、補助金に頼らず自主財源でお祭りをできるようになりました。その意味で札幌でのYOSAKOIソーラン祭りの成功は大きなものだとおもいます。
ただ日本を変えるとなるとこの運営ノウハウをどこまで参考にして、街づくりの手段として使えるかが課題です。今のままだとYOSAKOIソーラン祭りは広がりましたが、YOSAKOIソーラン踊りが広がるだけではまだ途半ばです。

YOSAKOIソーラン祭りというのは仕組みだということに気付いて、各地域でこの方法論を応用できたら日本は変わると思います。YOSAKOIソーラン祭りはたとえるなら、WindowsではなくてLinux(※)風のシステムです。

つまりそれぞれの地域がオープンに書き換えて、扱う人が地域にあったノウハウを開発すればいいと思います。なぜならYOSAKOIソーラン祭りというのは財政難でも高齢化社会でも、自主財源でできる街づくりの全ての課題を満たすノウハウなのですから。これを私は政治に進んでもやっていきたいと考えています。

■0(ゼロ)であるというアドバンテージ

学生に求めることは、動けということです。現在はインターネットもあるし、情報もあるし、本も買える、その中にはノウハウとして、使える情報がたくさんあります。ある意味、こんなに格差のない社会はないと思います。その中でどう動くか、その動き方というのは、ある意味教えてくれてといわれても言葉で教えられるものではないと思います。

学生はそれまで人生で作ってきたものはないから、失うものはないと思います。0からきたのだから、マイナスにもならないし、死ぬことはない。
私は単身で北海道に来ました。0で来たからこそYOSAKOIソーラン祭りが作れたとおもます。今はもう一度0の気持ちです、だから恐れるものがないです。そう考えると0でいるというのはありがたいことです。だからみなさんには恐れず行動してほしいですね。

※Linux:オープンソースのOSのこと。Windowsとは違い、ソースコードが無料で公開されておりユーザーが使いやすいように自由に改良を加えることができる。





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